orl.wakayama-med 2.0

和歌山県立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

抄読会:平岡Variability and Diversity of Nasopharyngeal Microbiota in Children: A Metagenomic Analysis

抄読会 2011.10.25 平岡
Variability and Diversity of Nasopharyngeal Microbiota in Children: A Metagenomic Analysis
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017035

「小児鼻咽腔細菌叢の変動性と多様性:メタゲノム解析」

全文訳は こちら
https://www.evernote.com/pub/bob-oka/journalclub

Introduction
WHOによると呼吸器感染は、いまだに全世界で小児、成人の主要な死亡原因の一つである。肺炎球菌やインフルエンザ菌髄膜炎菌、黄色ブドウ球菌といった一般的な病原性細菌は、鼻咽腔細菌叢に通常一時的に存在し、病原性が無いとされる共生菌からなる複合的な菌叢に埋没している。ヒト常在菌叢は概して、病原体侵入に対する、免疫システム、粘膜の構造と機能の助長そして、実際的に「保菌阻害」を行なっている点で、宿主に利益があると考えられている。鼻咽腔細菌叢への「潜在的病原体」のコロニー形成は主に無症状で行われるが、上気道感染や肺炎さらに、敗血症や髄膜炎に進展することがありうる。これらのことが起こる正確な機序はほとんどわかっていないが、新しい病原性細菌の獲得、ウイルス混合感染あるいは宿主や環境要因などに起因する、細菌叢のアンバランスが想定されている。さらに、侵襲的な攻撃が起こる確率と季節とのあきらかな相関は、上気道に存在する多くの潜在的な病原性細菌でよく見られる。そしてこの現象は、ここの病原性細菌の保菌率に付随して起こる変化では、十分に説明できないものである。これは宿主かつ/または取り巻く生態系が、コロニー形成した病原性細菌を局所に封じ込めることが、病気の進行予防に非常に重要であることを示している。小児、成人の鼻咽腔細菌叢に存在する潜在的病原性細菌の、発生頻度、流行、密度などのデータが豊富に有るにもかかわらず、鼻咽腔細菌叢コミュニティの詳細な構成は、健常状態と、罹患中ともに、研究されて来なかった。そこで我々は、幼小児の検体を異なる季節に集め、鼻咽腔細菌叢の詳細な構成、多様性をメタゲノム解析した。